企画展・特別展
もう一つの平家物語
今回の展示で取り上げる熊谷直実は、平安末から鎌倉初期にかけて活躍した武士です。「一ノ谷の合戦」で自分の息子と同年齢の平家の公達平敦盛を討った話は、「平家物語」だけでなく、文楽、歌舞伎などのさまざまな分野にとりあげられ、今に語り伝えられています。
一方で、五十歳頃からの人生はそれまでとは全く対照的に法然上人の弟子として念仏者の道を歩みました。「敦盛」を討ったことで人の世の無常を感じたことが直実を信仰へと向かわせた理由だと言われています。
本展では、長浜曳山祭でも上演されることの非常に多い「一谷嫩軍記熊谷陣屋」の世界、そして直実が武人から念仏一途の宗教者へと変貌していく過程をご覧いただきます。
企画展情報
- 開催期間:
- 平成24年7月21日(土)~9月2日(日)
- 会場:
- 1階曳山展示室南北エアタイトケース、ローケース、2階企画展示室
- 開館時間:
- 9時~17時(入館は16時30分まで)
特別展記念企画「平家琵琶の夕べ」
琵琶奏者、片山旭星さんによる演奏会です。
日時:平成24年8月18日(土)
演奏曲目:「祇王」「敦盛」「壇ノ浦」
場所:曳山博物館伝承スタジオ
入場無料
ファイル種類:PDF サイズ:1 MB
主な展示資料
平家物語12冊
江戸時代 京都市指定有形文化財 個人蔵
平家物語はもともと琵琶法師が語り継いでいた物語を13世紀ごろ記録し成立したと考えられる。本資料は京都の当道組織である奥村検校の所持していた八坂流系統本で、引き出しのついた専用の箱に収納されている。各冊は紺染め紙の表紙で表に松が、裏表紙には梅が書かれている。
平家物語巻9
江戸時代 京都市指定有形文化財 個人蔵
京都の当道組織である奥村検校の所持していた八坂流系統本全12冊の内の一冊で平家の公達敦盛との戦いを記したもの。有名な一の谷の戦いで年若い敦盛を討ったことに人生の無常を感じた直実はその後、発心出家し浄土宗の開祖である法然上人の弟子となり、通常、成しえなかった上品上生(じょうぼんじょうしょう)の往生を成し遂げる。
銅鑼
鎌倉時代 富山県高岡市 西福寺蔵
熊谷直実使用と伝える銅鑼。銅鑼は深い縁のある薄手の金属盤で木枠にぶら下げるか手に持つかして凸面を打つ。銅鑼は東アジアの金属製打楽器であり日本へは仏教楽器として中国から伝わったと考えられる。直実は坂東武者としてその勇猛果敢さで知られており、本資料は直実が源平合戦の際、使用したという。
木造 蓮生法師坐像(高さ48.0×幅46.0×奥行き30.0)
鎌倉時代 富山県高岡市 西福寺蔵
蓮生法師(熊谷直実)が、自分の姿を自ら刻んだと伝える木造の坐像。彫眼で首は細く、耳は大きく顎がしゃくれており、頭頂部がやや尖っている。広い方に偏袒右肩(へんだんうけん)に袈裟を掛け大きな手で合掌し坐する姿は、法然上人絵伝に描かれた念仏往生を遂げる蓮生法師の姿を彷彿とさせる。
六字名号版木(長さ60.0×幅25.0×高さ5.0)
鎌倉時代 富山県高岡市 西福寺蔵
法然上人より譲り受けた六字名号を蓮生法師が鉈で彫りあげたと伝える版木。向かって左に蓮生、右に源空と読める。源空は法然上人の諱である。自伝によれば上人より戴いた六字名号の直筆を蓮生が鉈で模刻し版木に仕上げたという。西福寺では鉈彫りの名号とよぶ。現在では摩耗著しく版木としては使用していない。
法然上人絵伝 紙本著色(幅62.0×縦165.0)
横井金谷筆 寛政11年(1799)
草津市指定文化財 草津市 宗栄寺蔵
法然上人の生涯を4幅の掛絵にしたもの。101の絵にそれぞれの場面説明がつき絵説きの形式になっている。作者は滋賀県笠縫村(現在の草津市)に生まれた横井金谷(1761~1832)。彼は各地を放浪しながら自分の訪れたあるいは縁のある寺院のために法然上人の生涯を記した絵巻を製作した。
(参考)所蔵者について
熊谷山蓮生院西福寺
富山県高岡市千木屋町4にある浄土宗の寺院
創建年は建久元年(1190)~正治2年(1200)ころ
寺伝によれば蓮生法師が京から武蔵国熊谷へ帰る際、北陸路を通り丁度高岡に入った時、修行のため、念持仏として背負っていた阿弥陀如来像から『このところ因縁の地なり』とお告げがあったので当地に庵を建て、阿弥陀如来像を本尊に祀り、寺号を熊谷山蓮生院西福寺と名付け所持の宝物を寄付し、その後本国に帰ったという。
これが西福寺の開基でありその後、兵乱にあい悉く焼失したが、当山中興の観誉上人が高岡地子木町に移り一宇を建立、御本尊を安置し、その後正徳年間(1702~)ころ、現在の千木屋に移り今日に至る。
≪展示資料一覧≫
資料名 | 数量 | 法量(単位cm) | 所蔵者 | 備考 |
平家物語 | 12冊 | 京都市個人蔵 | 京都市指定有形文化財 | |
法然上人絵伝 紙本著色 | 4幅 | 幅62.0×縦165.0 | 草津市宗栄寺 | 草津市指定文化財 |
木造 蓮生法師坐像 | 1躯 | 高さ48.0×幅46.0×奥行き30.0 | 富山県高岡市西福寺 | |
銅鑼 | 1挺 | 直径25.5 | 富山県高岡市西福寺 | |
六字名号版木 | 1枚 | 長さ60.0×幅25.0×高さ5.0 | 富山県高岡市西福寺 | |
六字名号 | 1紙 | 富山県高岡市西福寺 | ||
本朝百将図 | 1冊 | 長浜城歴史博物館蔵 | ||
熊谷陣屋写真資料 | 高砂山宮町組 | |||
熊谷陣屋小道具 | 3点 |
鎧櫃 高さ52.5×幅37×奥行き30
若木の桜 高さ182
菅笠 直径47 |
高砂山宮町組 | |
熊谷陣屋小道具 | 2点 | 長浜曳山文化協会 |