企画展・特別展

百花繚乱

 曳山博物館では、特別陳列展示シリーズ曳山の美①「百貨繚乱」を開催します。

 曳山の舞台障子や楽屋襖などに描かれる花々は大変美しくユニークで、絵画としても魅力的で完成度の高いものばかりです。本展示では曳山に描かれた花に着目し、盆梅と並んで長浜に咲くもう一つの大輪、曳山の魅力を再発見します。

 曳山に描かれる花は、曳山を華やかに演出するだけでなく、曳山の舞台で演じられる狂言の魅力を引き立たせる効果を持っています。たとえば祭りの担い手である山組の人びとは曳山の舞台障子に描かれる花を美しく見せるように、舞台上にあまり大道具などを置かないよう心がけたりします。

 花は西洋由来のものから、食材に用いるものまで様々です。江戸時代、既に長浜の町衆に西洋由来の花が浸透していたことや、暮らしに密接な花をモチーフにしたことがよくわかります。

 また、湖北の伝統文化「オコナイ」で作られる餅花の実物展示もおこないます。高月町東阿閉の餅花は大きな笹を使い短冊で飾ったまさに農村文化の花です。今年2月9日に奉納される実物です。

企画展情報

開催期間:
平成24年1月30日(月)~平成24年3月11日(日)
会場:
曳山博物館1階常設展示室、2階企画展示室
開館時間:
9時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:
開催期間中無休
入場料:
大人600円、小中学生300円
(団体20名以上2割引、長浜市、米原市の小中学生は無料)

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主な展示資料

■長浜曳山高砂山舞台障子腰襖(牡丹小禽図)江戸時代後期 高砂山宮町組蔵

 

 紅白の牡丹を主題として、そのまわりに遊ぶ小禽を配している。全体的に装飾化された花鳥・岩などの表現は、江戸時代後期の京狩野派の特徴をよく表している。左隅に「橋法 鳳岐」の印章がある。作者は船町(現長浜市朝日町)に居住していた山縣岐鳳である。

■長浜曳山壽山舞台障子腰襖(ざくろ小禽図)明治13年 壽山大手町組蔵

 

 鮮紅色の花と熟した実をつけたざくろの樹に、装飾化された小鳥が向き合うようにしてとまっている。手前の白い花で調子をつけ、画面をひきしめている。ざくろ特有の葉の硬さを表現するためか、太い線で輪郭を入れている。作者の杉沢春崖は片町(長浜市大宮町)に明治20年代まで住まいしたという。

■長浜曳山壽山楽屋襖(松孔雀図)江戸時代後期 壽山大手町組蔵

 

 遠くに松と滝、手前に牡丹の大輪を置き、孔雀を遊ばせる。裏には紙本墨画「雲竜図」が描かれ、「俊興画 印 」と落款・印章がある。俊興とは中谷求馬(貞幹・俊徳ともいう)である。彼は、今村(現長浜市今町)出身で、15歳で江戸に出て狩野派を学んだ。壽山前柱飾り金具の昇降竜下絵も描いている。

■長浜曳山鳳凰山舞台障子腰襖(花車図)江戸時代後期 鳳凰山祝町組蔵

 

 金雲の中に、紅・白・黄・桃色などの花をつけた大菊をいけた藤籠で飾った御所車を描く。色彩のバランスを考えた菊の配列がすばらしい。右手に「法橋岐鳳筆 印  」と落款・印章があり、作者は山縣岐鳳と判る。彼は船町(現長浜市朝日町)に居住し町絵師として子弟の育成にあたった。

■長浜曳山鳳凰山胴幕(草花図)江戸時代中期 鳳凰山祝町組蔵

 

 本幕は曳山の側面を飾る幕であり、役者が待機する楽屋を覆う役目もある。十八世紀前半に製作され、江戸中期に輸入されたペルシャ氈である。元はもう少し長かったが、楽屋側面の高さに合わせるため、上部で裁断されている。

■長浜曳山月宮殿亭下層両側面引戸(動植物図)江戸時代末 月宮殿田町組蔵

 

 一枚の戸を十五の格子に区切り、ガラス絵をはめ込み、亭を豪華に飾る。絵はコバルト色の地に、装飾化した種々の草花や小禽を油絵具で描いている。パンジー、バラなど西洋の草花を配し、花の縁や葉脈などは金線で書き入れている。なお、ガラス窓を装飾に用いている曳山は月宮殿のみである。

 

【展示資料目録】

資料名 方量
(単位:cm)
年代 所蔵者
長浜曳山高砂山舞台障子腰襖
(牡丹小禽図)
164×161 江戸時代後期 高砂山
宮町組
長浜曳山壽山舞台障子腰襖
(ざくろ小禽図)
159.5×176.8 明治13年 壽山
大手町組
長浜曳山壽山楽屋襖
(松孔雀図)
162.1×176.6 江戸時代後期 壽山
大手町組
長浜曳山鳳凰山舞台障子腰襖
(花車図)
154.5×161 江戸時代後期 鳳凰山
祝町組
長浜曳山鳳凰山胴幕
(草花紋)
212×168 江戸時代中期 鳳凰山
祝町組
長浜曳山月宮殿亭下層両側面引戸
(動植物図)
55.8×32.8 江戸時代末 月宮殿
田町組
高月町東阿閉餅花 約200 現代 高月町
東阿閉
草花文菓子型
(18組)
150~各種 現代 個人蔵
草花文塗り椀
(19組)
150 現代 個人蔵