企画展「祭を魅せるデザイン~色彩と文様のチカラ~」

江戸時代後半ごろから造られはじめた長浜の曳山。曳山は見送幕(みおくりまく)や花道幕(はなみちまく)、飾(かざり)金具(かなぐ)や舞台(ぶたい)障子(しょうじ)など様々な装飾品で彩られています。
何気ないデザインのなかに、実は当時の人々の願いや祈りが込められています。そこには町衆の文化的素養の高さが感じられます。また豪華絢爛な装飾品からは、当時の長浜の経済的な繁栄ぶりがうかがわれます。
本展では、曳山の装飾品のうち幕類を中心として色彩や文様の意味を探っていきます。
曳山の装飾品には祭を盛り上げるための大きなパワーが潜んでいます。祭りの高揚感を楽しんでいただければ幸いです。

企画展情報

開催期間:
令和4年4月29日(金・祝)~6月5日(日)
会場:
長浜市曳山博物館 1階・2階展示室
開館時間:
9時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:
会期中無休
入場料:
一般600円/小中学生300円
※20名以上の団体は2割引、長浜市・米原市の小・中学生は無料。
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳等をお持ちの方及びその付添いの方1名は無料。(ただし、証明となる手帳等の提示が必要)

展示説明会

日時:
■令和4年4月30日(土)13時30分~ ■令和4年5月 4日(水・祝)13時30分~ ■令和4年5月 7日(土)13時30分~
場所:
曳山博物館 展示室
説明者:
曳山博物館 学芸員 山本 順也
参加費用:
入館料(大人600円)

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ファイル種類:PDF  サイズ:2200KB

主な展示資料

旧花道幕(前側)「梅(うめ)竹(たけ)に龍虎図(りゅうこず)」 
1枚 近代 月宮殿田町組蔵

 

本図は一見、乱雑な不思議な図柄に見えるが、よくみると老梅の花と竹が描かれている。日本では、梅も竹も縁起の良い、めでたいものとして重宝される。図柄としては古来より好まれて用いられてきたものである。

 通常はもっと明快な図柄を選択するものだが、あえて複雑なデザインにしている理由がある。実はこの中に龍と虎の絵が隠されていて、ちょっとしたトリックアートとなっているのである。龍や虎は、たくましく強い男の子に育つようにという願いを込めてよく使われる図柄だが、本図のようなデザインは当時の人びとの粋(いき)な洒落(しゃれ)っ気(け)があらわれているといえる。

 

 

 

常磐山見送幕「天平(てんぴょう)人物図(じんぶつず)
1枚 大正15年(1926) 呉服町組常磐山蔵

 

見送幕らしく縦3.13m、横2.01mと堂々として、仏教的色彩の強い天平文化(8世紀前半ごろ)を彷彿(ほうふつ)とさせる図像となっている。

 縁には画面を囲むように蓮華(れんげ)唐草(からくさ)文(もん)が廻らされ、画面上部に天蓋(てんがい)(頭上に飾る覆い)を飾り、5人の宮廷人が画面いっぱいに描かれる。中央には開いた蓮華を持つ女性を、その背後に箜篌(くご)(東アジアで使用されたハープのような楽器)、篳篥(ひちりき)(縦笛)、琵琶、笙(しょう)を伴奏する男性が練り歩く。何らかの宮廷行事の様子をあらわしていると思われる。これらの図柄は仏教美術・建築などによく用いられるものである。

 色使いの多さは華やかな雰囲気を醸し出し、巨大画面をほぼ埋め尽くすような大きな人物像は、遠くから見る人の視点に立ってつくられている。

 

 

 

常磐山花道幕「雲龍図(うんりゅうず)」
1枚 昭和27年頃(1952) 呉服町組常磐山蔵

 

龍はもっともポピュラーな図柄であろう。古代中国では、龍の文様を使用できるのは皇帝だけと決まっており、日本では織田信長が印章に龍の文様を用いていることでも知られるように、天下人を象徴する文様である。
 この龍が渦巻く雲と組み合わされると、雲龍紋と呼ばれる文様になる。勢いよく天に上昇していく様子から昇(のぼ)り龍とも呼んで、上昇志向をあらわす縁起良い文様として、学業成就や技術の向上、男の子の強く無事なる成長などの願いが込められて用いられる。

 

 

 

萬歳樓旧舞台障子腰襖「菊花(きっか)薄(すすき)図(ず)」
3面 江戸後期
瀬田町組萬歳樓蔵

 

かつて萬歳樓の舞台障子腰襖に描かれた絵画。作者は印章から江戸時代後期に活躍した山縣岐鳳(やまがたぎほう)と判明する。岐鳳は京狩野(きょうかのう)派の絵師で名手と伝えられる頼章(よりあき)を父に持つ。のちに浅井郡酢村に移り住んだという。さらに岐鳳は長浜下船町(現長浜市朝日町)の大塚忠三郎の養子となり、以後この地を拠点に画人として活躍した。このため長浜曳山には岐鳳の手になる作品が、所々で見ることができる。本図もそのうちの一つで、紅白、桃色の花を盛んに咲き誇らせる菊と薄を描く。いまだつぼみのものもあり、これから花を開く若い芽という意味が込められる。ここでは働き盛りの壮年と、子どもたちの調和が見て取れる。
また、草花の絵はもっとも華やかさを演出してくれる画題で、菊も薄も秋を代表する草花である。このような秋の草花が画題として用いられたのは、岐鳳の時代は、長浜曳山祭が旧暦9月の秋に行われていたからであろう。

 

 

 

花道幕(後ろ)の乳
1枚 近代 神戸町組孔雀山蔵

 

これは幕を吊るための乳に糸で縫いだされた文字と文様である。「可」「勝」「神」はめでたい文字で、特に「可」は少し字体を崩すことによって「叶」の意味をもあらわす。文様のうち星印は一筆書(いっぴつがき)で記される「五芒星(ごぼうせい)」というまじないの紋で、平安時代の陰陽師(おんみょうじ)安倍晴明(あべのせいめい)が発明したといわれる。一筆書は筆が書き出しの元の位置に戻ってくることから、「無事に帰ってくる」といった意味がある。
また縦線4本と横線5本からなる格子状の文様は「九(く)字(じ)切(ぎ)り」と呼ばれ、魔除けの意味がある。本来は中国の道教(民間信仰)から伝来したものらしいが、現在でも山伏などが危険な場所などに出くわすと指先でこの九つの線を描き(これを九字を切るという)、魔除けのまじないとしている。