企画展・特別展

長浜開町450年記念企画展「秀吉以前の長浜~曳山文化のルーツを探る~」

長浜曳山祭は秀吉の時代に始まったといわれています。しかし、曳山の舞台で子ども歌舞伎を演じるという行事は、すでに秀吉以前から長浜の町に根付いていた伝統芸能の文化が開花したものといえます。

中世の長浜地域には、近江猿楽(さるがく)三座と呼ばれた猿楽集団のうち、山階座と下坂座が存在しました。猿楽とは、のちの能楽のことで歌舞劇を演じるものでした。そして同時に七条村では面打師の井関家が代々にわたり活躍しており、全国各地に猿楽面の作品を残しています。

一方で、長浜地域周辺には山岳信仰に基づいた寺院群が多く存在していました。これらの寺院では猿楽が法会の際に行われたり、あるいは堂塔の修造資金を調達するために人びとを集めて行われた勧進(かんじん)猿楽というものもありました。長濱八幡宮にはこれらの文化の影響が見て取れます。

秀吉によって形成された長浜の町ですが、その文化的資質は古くから育まれてきたものであり、長浜の町にしっかりと根付いてきたものでした。それらは信仰に支えられ、守られてきた伝統芸能の姿ともいえます。本展では秀吉以前の長浜地域に、すでにのちの曳山文化の形成につながる土壌が形成されてきたことを、多様な文化財を紹介しつつ明らかにしていこうとするものです。

企画展情報

開催期間:
6月17日(土)~7月21日(金)
会場:
長浜市曳山博物館1F・2F展示室
開館時間:
9時~17時(入館は16時30分まで)
入場料:
大人600円/小中学生300円
※20名以上の団体は2割引、長浜市・米原市の小・中学生は無料。
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳等をお持ちの方及びその付添いの方1名は無料。
(ただし、証明となる手帳等の提示が必要)

展示説明会

日時:
6月24日(土)・7月1(土)・8日(土) いずれも13時半~

パンフレットダウンロード

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主な展示資料

①太鼓、太鼓台(文安元年、永((長))尾護国寺等の墨書銘あり) 1基
高さ110.8㎝ 文安元年(1444) 滋賀県指定文化財 長濱八幡宮蔵

 

太鼓台の底面に墨書で年号や寺院名が記され、湖北の山岳寺院の中心地、伊吹山の長尾寺(ながおじ)から長濱八幡宮に伝来したものと判明する。長濱八幡宮にはこうした山岳寺院との交流関係がうかがえ、文化的影響も考えられる。本太鼓は寺院での法楽などで用いられたと考えられ、制作当初の彩色も残るなど貴重な文化財である。なお、昨年度新たに滋賀県指定文化財となった。

 

 

 

②輪宝羯磨文説相筥 1双
縦24.3㎝ 横35.8㎝ 高13.8 文亀3年(1503) 滋賀県指定文化財 醍醐寺蔵

 

湖北の代表的な山岳寺院として古くから資料に登場する醍醐寺に伝来する密教法具の一つで、説相筥(せっそうばこ)とは法会で僧侶が説法する際に脇机に置くもの。中には法会の次第や香炉といった持物を納めている。本資料は装飾性が高く、底面に制昨年が記され状態も良く、文化財として大変貴重なものである。

 

 

 

③鉄入峰斧(てつにゅうぶおの) 1口
縦29.5㎝ 横(刃長)42.3㎝ 明応3年(1494) 滋賀県指定文化財 個人蔵

 

山伏の峰入りで用いる斧。大型のものであり、実用品というよりも先達を象徴する儀式的なものと考えられる。刻銘があり、明応3年に宗延が制作したもので、大吉寺(長浜市野瀬町)の行者講中の所持品だったことがわかる。

 

 

 

④茗荷悪尉 1面・大天神 1面
茗荷悪尉:面長20.5㎝ 大天神:面長21.0㎝ 室町時代 長浜市指定文化財 足柄神社蔵

 

足柄神社(七条町)の春祭りに使われたもの。茗荷悪尉面は両面とも面裏には「イせキ」と「◇」の刻銘がある。中世の七条村には面打師井関家が活躍しており、全国各地に同家が代々制作した能面が伝わっている。

茗荷悪尉とは目の形が茗荷形で、耳がない悪尉面(老神や偉人、怨霊などをあらわす面)を指す。人間味のかかった役に用いる。大天神は菅原道真をあらわした面。

 

 

 

⑤多賀参詣曼荼羅 1幅

縦142.5㎝ 横179.7㎝ 安土桃山時代 多賀大社蔵

 

多賀大社に伝わる社寺参詣曼荼羅。社寺参詣曼荼羅とは、画中に当該寺社の由来や縁起などを盛り込んで絵解きし、見聞した人々を参拝へといざなう一種の観光ガイドマップである。注目されるのは、中央付近に車輪をつけた舞台上で能を舞っている人物が描かれていることである。曳山祭のルーツといえる。