企画展・特別展

華麗なる引札の世界

 曳山博物館では、長浜のマチの魅力を紹介するシリーズの第二弾として、企画展「華麗なる引札の世界」を開催いたします。 引札とは、江戸時代に新たに登場してきた刷り物による広告で、現代でいうところのチラシです。引札は、商店の宣伝や売り出しをしらせるために広く配布され、一枚一枚の中に客の関心を引きつける艶やかな絵柄や、心を浮き立たせる文言などが巧みに織り込まれているのがその特徴です。

 江戸時代後期から明治時代初期にかけて流行した引札は、各商店が得意先への正月の挨拶と共に配ったもので、錦絵の技法を取り入れた艶やかな色彩と大胆な構図は、百年の時代を経てなお見る者を魅了します。引札は明治時代の後半から大正時代頃までは盛んにつくられましたが、新聞が各地で発刊されるようになり、折り込み広告や掲載広告が一般的になるにつれて姿を消していきました。しかし、引札には当時の世相や風俗が色濃く反映されており、また見て美しい芸術作品として、近年は特に注目を集めています。

 今回の企画展では、長浜の商店街にゆかりのもの引札を中心に、当時長浜の商店が配った多彩な引札を公開いたします。

企画展情報

開催期間:
平成22年7月17日(土)から9月12日(日)まで  
午前9時から午後5時まで
会場:
曳山博物館2階企画展示室
開館時間:
9時~17時(入館は16時30分まで)

主な展示資料

【引札とは】

引札には、様々な意匠が施されています。最も数多く製作されたのは縦26.0×横38.0センチの横型もので、中央から右に背景となる絵が描かれ、左側に店の名前と取り扱う商品、そして店の在所などが記載されます。また欄外には発行年月日と発行者、印刷業者の名前が入れられたものもあります。

引札には、実に多彩な絵が描かれています。恵比寿大黒などのおめでたい図柄や、神話や歴史を題材とした情景の描写、美しい女性の姿に勇ましい軍人姿、そして動物や自然景観、それに汽車や汽船といった文明開化の産物まで、その数は知れません。
引札の絵は、平面でありながら遠近感を巧みに演出した図案となっています。描かれた人物や動物は時に画面の枠をはみ出し、また一つの引札の中に何枚もの絵が組み合わされ、まるでだまし絵のように不思議なつながりを見せたりするなど、デザインのセンスは秀逸で、見るものを楽しませてくれます。

女万歳図(長浜町東北町・居川店)

 

 

【主な展示資料】

1.牛若丸五条大橋図(宇治政所御茶處・廣瀬眞太郎):明治時代 長浜城歴史博物館蔵

牛若丸と弁慶が出会う京の五条大橋の様子を描いた神戸町の廣瀬眞太郎商店の引き札。笛を吹きながら橋を渡る牛若丸に対して、その刀をねらう弁慶が後方に配されている。この店は茶を取り扱う眞太郎の店舗であるところから「茶しん」と呼ばれ親しまれています。

 

2.大黒様と赤熊童子(和洋酒類商・濱寄商店):明治時代 長浜城歴史博物館蔵

長浜伊部町の酒類商濱寄商店の引き札。大黒様のうしろにある壺から、赤熊をかぶった童子が、何人も踊りながら出てくる様子が描かれています。童子が店の名前が書かれたところをめくって裏を通ってゆくところがシルエットで表現されており面白い。

 

3.金のなる木図(小間物袋物商・ます忠本店):明治37年(1904)長浜城歴史博物館蔵

長浜三ツ矢町の小間物袋物商ます忠の引き札。音楽器や自転車も商っている事が記されており、正札がつけられている事も付記されています。絵柄は恵比寿大黒が金のなる木に飾りを施している様子で、実の部分は硬貨型にプレスして表現されている。

 

4.大黒の郵便図(呉服古物商・伊藤宇平):明治時代 長浜城歴史博物館蔵

長浜宮町の呉服古物商伊藤宇平の引き札。この引き札は日章旗と自転車に乗る郵便配達、そして賀状を読む恵比寿の三つの画面で構成されていますがその間を郵便配達に扮した大黒がまたいでいる斬新な構図となっている。はがきのところに小包郵便の料金表が付いています。

 
 
5.茶会と美人図(銘茶調進所・菊善):明治時代 長浜城歴史博物館蔵

長浜宮町の宇治政所銘茶調進所菊善の引き札。茶を取り扱う商店の引き札らしく茶会の様子が描かれています。立てられた茶を運ぶ女性が物憂げに振り向き、その思いの中身であろうか、円窓の中には四人の女性が茶席に臨む。女性の左手薬指に指輪が見えるのが意味深です。