企画展・特別展

竜のかたち

 来年の干支は辰年で、動物では竜です。竜は想像上の動物ですが、海や池、川などの水に関する場所や地底に住み、雲雨を自在に支配する力を持つとされ、古くから水神として信仰されてきました。また、竜が雲を得て天に昇るところから、出世の象徴として、盛んに用いられてきました。

 また、竜は米どころ近江とは切っても切れない関係にあります。近江は琵琶湖をはじめ水が豊富にある一方で、川の水の枯れやすい扇状地が多く、水の確保に苦慮してきました。様々な形で竜が表出する雨乞い信仰が多く遺されているのものそのためです。また、竹生島祭礼図には竜より強いとされる金翅鳥船(きんしちょうせん)に乗った武将の姿が描かれ、曳山には竜が多く装飾されています。

 奇しくも本年は日本が未曾有の水害に見舞われ混迷を極めました。そこで来年の干支・竜に思いをこめ、新たな一年を始めようというものです。

企画展情報

開催期間:
平成23年12月19日(月)~平成24年1月29日(日)
会場:
曳山博物館1階常設展示室、2階企画展示室
開館時間:
9時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:
12月29日(木)~1月3日(火)
入場料:
大人600円、小中学生300円
(団体20名以上2割引、長浜市、米原市の小中学生は無料)

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主な展示資料

 

猩々丸胴幕(昇降竜図) 大正15年復元新調 猩々丸船町組蔵

 

 紺の繻子地に、金糸の昇り竜・降り竜を四頭交互に織り出した曳山の側面を飾る幕。繻子織による滑らかな光沢が特徴である。昇降竜は壽山の前柱にも用いられているが、竜はこの一対の組み合わせで表現されることが多い。これは海中へ潜る竜もいれば天上へ昇る竜もいるという習性を表現している。なお、竜は曳山各部のデザインとして多く使われているものの一つである。

 

 

壽山左右前柱下絵 寛政元年 個人蔵

 

 長浜曳山祭の曳山である壽山の前柱に施された飾り金具昇降竜の下絵。作者は今村(現長浜市今町)に在住した中谷求馬(1748~1832)である。名は貞幹、俊徳、俊興ともいい、白雲洞と号した。天保3年、85歳没。なお平成元年の壽山の修理の際、向かって左の匂欄擬宝珠柱の金谷と陰刻のある酒を飲む中国風人物飾金具の裏面に、隣村国友の彫金師藍水堂一徳とともに彼の名前が記されていた。

 

竜形常香盤 江戸時代後期 長浜市加田今町安明寺蔵

 

 竜の形をした香台。常香とは仏前に絶やさずに焚いておく香のことを指し、盤は平たい台のこと。竜は仏教では古くから仏伝に現れ、また仏法守護の天竜八部衆の一つとされた。そのため寺院の伽藍には竜の彫刻を施したり、天井に竜を描き手を打つと特有の残響音が聞こえる現象を鳴き竜と呼んだりする。なお、当寺には、雨乞いの際に用いた太鼓やその担い棒も伝えられている。

 

壽山楽屋襖(雲竜図)壽山大手町組蔵

 

 曳山の楽屋を仕切る襖の裏面に竜を墨書したもの。四面の襖いっぱいに渦巻く雲の間から頭と後足をのぞかせる竜を大きく描く。突き出した竜の眼光は鋭く、髭は長くたなびき、頭の角は斜め上方に突き出て勇壮な姿となっている。「俊興画  」と落款・印章があり、中谷求馬の作品。中谷求馬は、今村出身で、15歳で江戸に出て狩野派を学んだ。なお、襖の表面には松孔雀図が描かれている。

 

鳳凰山花道幕(瑞雲波模様竜図) 平成12年復元新調
鳳凰山祝町組蔵

 

 長浜曳山祭の曳山に付属する花道に掛ける幕。橋懸幕ともよぶ。曳山の舞台周囲には引き出し式の花道が設けられているが、ここから楽屋が見えないようにするための幕である。勾欄にかかるのを避けるための切り込みが入っている。紋様は清国の官服大泊山錦を模して織ったものと伝えられている。