特別公開「重要文化財の見送幕」

鳳凰山の見送幕は、トロイア戦争物語の5枚1組で構成されるタペストリーのうちの1枚、「出陣するヘクトールと妻子の別れ図」である。16世紀後半に、ベルギーのブリュッセルで職人ニケイズ・アエルツによって製作された。

翁山の見送幕「二人の武将図」は、色彩や織から16世紀後半にベルギーのオードナルドで製作されたものである。

本展覧会では、ベルギーから舶載(はくさい)されたタペストリーが使用された重要文化財に指定される見送幕を展示し、その優れた美と構図の妙を通して町衆の美意識と活力、そしてその経済力の高さを紹介していく。そこから湖北・長浜のシンボルとしての「曳山祭」が果たしてきた役割を再認識するものである。

企画展情報

開催期間:
令和4年10月1日(土)~10月16日(日)まで16日間
会場:
長浜市曳山博物館 1階展示室
開館時間:
9時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:
会期中の休館なし(ただし、10月8日(土)は曳山入替のため、1F曳山展示室は閉室し、入館料は無料となります。)
入場料:
大人600円/小中学生300円
※20名以上の団体は2割引、長浜市・米原市の小・中学生は無料。
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳等をお持ちの方(手帳等の提示が必要となります)及びその付添いの方1名は無料。

展示説明会

日時:
10月1日(土)・2日(日)・9日(日)・10日(祝)・15日(土)・16日(日) いずれも13時30分~約30分ほど
参加費用:
予約不要 参加費無料(入館料は必要となります)

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主な展示資料

1.鳳凰山(ほうおうざん)飾(かざり)毛綴(けつづれ)『イリアス』トロイア戦争物語のうち「出陣するヘクトールと妻子の別れ図」 1枚 16世紀後半 魚屋町組鳳凰山蔵   
(法量:縦294.0㎝×横210.0㎝)

 

2.翁山(おきなざん)飾毛綴「二人の武将図」(附時金具16個) 1枚 16世紀後半 伊部町組翁山蔵
(法量:縦295.0㎝×横222.0㎝)

 

 3.鳳凰山飾毛綴売上(うりあげ)文書(もんじょ) 1通 文化14年3月(1817) 魚屋町組鳳凰山蔵
(法量:縦30.0㎝×横45.8㎝)

 

 4.鳳凰山飾毛綴売上文書 1通 文化14年3月8日 魚屋町組鳳凰山蔵
(法量:縦30.0㎝×横45.5㎝)

 

※以上、重要文化財

 

 

 

【展示資料解説】

1.長浜祭鳳凰山飾毛綴『イリアス』トロイア戦争物語のうち

「出陣するヘクトールと妻子の別れ図」

この見送幕と祇園祭鶏鉾の見送幕、霰天神山の前掛、祇園祭・鯉山の幕類、前田育徳会の壁掛の総合調査によって、縁飾の端から「B・B」のイニシャルが織り込まれているのが発見された。また前田育徳会の壁掛にある図案化された「TSEA」のマークから、16世紀後半にヨーロッパのベルギー・ブリュッセルで、職人ニケイズ・アエルツによって製作されたタペストリーであることがわかった。

図柄は、ギリシャの詩人・ホメロスの作った叙事詩『イリアス』に記録されたトロイア戦争の一場面「出陣するトロイアの王子ヘクトルと妃アンドロマケ・幼子アスチュアナクスとの別れ」の様子が織り出されたタペストリーのうち、向かって右半分の部分である。『イリアス』では、この「ヘクトルと妻子との決別」が涙を誘う有名な見せ場の一つとなっている。このトロイア戦争のタペストリーは、5枚1組で構成されていたと考えられている。1580年から1600年頃にかけてつくられたタペストリーは、桃山時代から江戸時代前期の対外貿易で日本に舶来したと考えられる。仙台藩主伊達政宗がローマ教皇のもとに派遣した慶長遣欧使節の支倉常長が持ち帰ったという説や、宣教師や商人が舶載したという学説があるが判然としない。ただ伝来後に、二代将軍徳川秀忠に献上され、息子の会津藩主保科正之や娘婿の前田利常に分けられたと考えられている。しかしその約200年後に、町衆が入手するまでの経緯も不明である。そしてこのタペストリーは3分割され、文化12年(1815)から3年間で祇園祭鶏鉾と霰天神山そして長浜の鳳凰山にて購入された。なお鳳凰山の山組は、この見送幕を200両で松坂屋から購入している。16世紀後半に、ベルギーのブリュッセルで製作されたタペストリーがよくわかる貴重な資料である。

                  

2.長浜祭翁山飾毛綴「二人の武将図」

この見送幕は、経糸(たていと)には太めの羊毛糸、緯糸(よこいと)は黄・紺・黒・茶・赤・緑などの羊毛糸と白絹を使用して織ったタペストリー(毛綴(けつづれ)織(おり)・紋織(もんおり))である。タペストリーは、ヨーロッパでは室内装飾に使用された壁掛のこと。この見送幕は、色彩や織から16世紀後半に、ベルギーのオードナルドで製作されたものである。描かれた図柄は諸説あり、トルコとペルシャが戦ったときの講和の様子をあらわしたものとの説や、旧約聖書のダビデ王物語の一場面であるとの説があるが定説をみない。購入した経緯については、山組の伝承では加賀の豪商銭屋五兵衛が売りに来たものを買い求めたもので、もとはフランスのベルサイユ宮殿に掛かっていたものとか、組内の北出町の薬屋吉兵衛が北国へ商売に出かけた時に、銭屋五兵衛から買ったとも伝えている。この様なタペストリーが、いつごろ日本に伝来したかはあきらかではないが、桃山時代から江戸時代初期にかけて対外貿易(南蛮(なんばん)貿易)によって舶来したものであろう。この見送幕は保存も良く、わが国の海外文化交流を示す染織資料として貴重である。また長浜町衆の、文化と経済力の豊かさがよくわかる重要なである。