企画展・特別展

企画展「藤岡和泉―ユネスコ無形文化遺産・長浜曳山祭を造った大工のすべて―」

平成28年(2016)ユネスコ無形文化遺産に登録され、長浜が世界に誇る祭が長浜曳山祭です。長浜には、13基の曳山が伝わりますが、長浜の曳山を特徴づける点が、飾り山形式の長刀山を除き、子ども狂言(歌舞伎)を演じる舞台を備えていることです。この曳山を生み出した知られざる大工一門が藤岡家です。

藤岡家は、初代甚兵衛光守に始まり、江戸時代を通じて活躍した大工の名門です。代々、長浜伊部町(長浜市元浜町)に居住し、「和泉」の名前を冠したことから、地元では藤岡和泉の名で知られています。

初代の甚兵衛光守は、神社仏閣に携わる宮大工で、同時代に甚兵衛重光とともに活動していました。甚兵衛光守や甚兵衛重光ら初代の藤岡家の特筆すべき事績は、三間で唐破風や千鳥破風を備えた大型の仏壇を生み出したことです。彼らが造り出した仏壇は、和泉壇と呼ばれ、江戸時代仏壇の生産地として知られた長浜の仏壇の中でも最高級のブランド品として人気を博しました。

2代目甚兵衛長好は、和泉神社(長浜市小谷上山田町)を製作したことで知られ、さらに長浜の曳山・靑海山の製作者として知られます。2代目以降、藤岡和泉家は、13基全ての長浜の曳山建造に関わり、祭が江戸時代全国的に知られるとともに、その名を広めていきました。

藤岡家が手掛けた建造物や仏壇は、長浜市を中心に米原市や彦根市に残されています。彼らが生み出した曳山は、米原市の米原曳山祭や岐阜県垂井の垂井ひき山祭に出場しており、各地の祭礼にも影響を与えた全国的にも稀有な大工一門といえます。本展では、江戸時代において長浜が生んだ名匠・藤岡和泉家に伝わった資料群である藤岡家大工資料を中心に、藤岡家建造物にみられる特徴や、初代から順に江戸時代から明治、大正時代における彼らの業績にスポットをあて、藤岡家の全貌を明らかにします。

現在、大型の和泉壇は、大きな民家からコンパクトな住居への環境の変化もあり、放棄されているという現状があります。そのため、この展覧会を通じ、藤岡和泉の存在が全国的に知られ、再評価されるきっかけとなれば幸いです。

企画展情報

第1会場

開催期間:
前期展示 令和3年6月12日~7月4日 後期展示 令和3年7月5日~31日
会場:
長浜市長浜城歴史博物館 2階展示室
開館時間:
午前9時~午後5時(ただし、入館は午後4時30分まで)
休館日:
会期中無休
入場料:
大人410円/小中学生200円
※20名以上の団体は2割引、長浜市・米原市の小・中学生は無料。
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳等をお持ちの方及びその付添いの方1名は無料。(ただし、証明となる手帳等の提示が必要)

第2会場

開催期間:
前期展示 令和3年6月12日~7月4日 後期展示 令和3年7月5日~31日
会場:
長浜曳山博物館 1階展示室
休館日:
会期中の休館なし
開館時間:
午前9時~午後5時(ただし、入館は午後4時30分まで)
入館料:
大人600円/小中学生300円
※20名以上の団体は2割引、長浜市・米原市の小・中学生は無料。
※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳等をお持ちの方及びその付添いの方1名は無料。(ただし、証明となる手帳等の提示が必要)

(1)展示説明会
日 時:令和3年6月19日(土) 9:30~、11:00~
会 場:長浜城歴史博物館 研修室
参加費:入館料
定員:30名(先着順)

 

(2)シンポジウム「湖北の信仰文化と浜仏壇」
日 時:令和3年6月19日(土)、20日(日)両日とも13:30~
会 場:曳山博物館 伝承スタジオ
参加費:500円
内 容:実演会「濱壇の解体」
対談トーク「湖北の信仰」(観音ガール×太田浩司×関谷光洋)
講演会「和泉仏壇と長浜仏壇」など
申 込:濱壇保存会(0749-63-4611)

 

(3)特別講座「大工頭中井大和守と近江の大工たち」
日 時:令和3年6月27日(日)13:30~
会 場:セミナー&カルチャーセンター「臨湖」
参加費:一般500円(長浜城友の会会員は無料)
講 師:谷 直樹 氏(大阪市立大学名誉教授)
申 込:長浜城歴史博物館(0749-63-4611)

 

(4)歴史トーク「藤岡和泉のすべて」
日 時:令和3年7月10日(土) 13:30~
会 場:長浜曳山博物館伝承スタジオ
参加費:500円
講 師:長浜城歴史博物館学芸員 坂口 泰章
定 員:30名(先着順)
申 込:曳山博物館(0749-65-3300)

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主な展示資料

第1章 藤岡和泉の作事
藤岡家は、仏壇や神社仏閣、曳山など大工として幅広い作事を行っていたことが現存する彼らの作品や藤岡家大工資料から知られます。さらに、昨年新たに発見され、今年度長浜城歴史博物館の収蔵品となった藤岡家に関する資料から、これまでに知られていた作品の他にも、仏壇に付属する仏具も数多く制作していたことが判明しました。こうした多岐に渡る藤岡家が手掛けた作品を紹介します。

21 志賀谷村薬師堂厨子三分一之図 1幅 紙本墨画墨書 江戸時代(18世紀) 藤岡家大工資料

 

14 西本願寺用前卓二分一略図 1枚 紙本墨画墨書 江戸時代(19世紀)~明治時代 藤岡家大工資料

 

 

第2章 藤岡和泉の技と意匠
藤岡和泉が手掛けた建造物の魅力の一つが、見事な彫りを魅せる彫刻や巧みな意匠(デザイン)です。ここでは、藤岡家大工資料に残された型紙(建造物のデザインをかたどる紙形)を中心に、藤岡様式ともいえるの藤岡家の特徴を明らかにします。

59 伊香郡黒田村妙徳寺虹梁型紙 1枚 紙本墨書 明和8年(1771) 藤岡家大工資料

77 桁隠し型紙 1枚 紙本墨書 江戸時代(18~19世紀) 藤岡家大工資料

 

 

第3章 藤岡和泉歴代の軌跡

藤岡家は初代甚兵衛にはじまる甚兵衛家が4代目まで続き、その後甚兵衛家には跡取りが無かったようで、「藤岡和泉」の名は、弟の重兵衛家に受け継がれます。ここでは、初代から、明治時代初期の活動が知られる8代目光隆までの業績を、順に辿り、藤岡家の全貌に迫ります。

祖師前御卓図 江戸時代18世紀 藤岡家大工資料(長浜城歴史博物館蔵)
昨年新たに発見され、長浜城歴史博物館の所蔵となった新出資料。今回発見された資料群には、仏壇や厨子や仏壇に付属する前卓等の仏具に関する資料が数多く含まれている。本資料は、藤岡家5代目安舒の墨書が記された前卓図で、「祖師前御卓壱面」とあることから、寺院で用いられた前卓の図面であろう。

 

藤岡和泉展出品リスト